競争的研究費の研究課題 - 山田 満稔
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生殖器官の共生細菌叢と細菌性代謝産物を介したヒト生命萌芽の分子機構の解明
2023年06月-2029年03月科学研究費助成事業, 山田 満稔, 挑戦的研究(開拓), 補助金, 研究代表者
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ヒト生殖器官には乳酸菌を始めとした多様な共生細菌が生息し、長らく生殖との密接な関係が示唆されてきた。無菌だと信じられてきた子宮内にも細菌が共生することが近年明らかとなったが、生殖に細菌がどのような影響を及ぼすのか、分子機構の多くは未解明である。本研究では、細菌に由来する代謝物に着目し、細菌と真核生物のドメインを跨いだシグナル分子による生殖の多様なステージへの関与と機能を明らかにすることを目的とする。ヒト生殖器官の共生細菌叢ライブラリを作成し、生殖の段階に応じた宿主の代謝酵素の働きを明らかにすることで、細菌性代謝産物を介した生命萌芽の分子機構を解明する。
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2021年07月-2026年03月
科学研究費助成事業, 宮戸 健二, 山田 満稔, 櫻木 淳一, 河野 菜摘子, 宮戸 真美, 挑戦的研究(開拓), 未設定
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マイクロエクソソームは、エクソソームと構成成分を共有するものの構造が全く異なり、エクソソームよりも微細で、脂質二重膜を持たない逆ミセル構造をとり、集合してマトリックス様のシートを形成する。さらに、エクソソームが多胞性エンドソーム由来であるのに対して、マイクロエクソソームは細胞膜の陥入によって形成され、細胞膜の修復を促進する構造体として働く。本研究では、マイクロエクソソームの構成成分、形成過程を解明し、2つの構造体が存在する生物学的意義を、生命体の生と死から解明する。2つの構造体が、正常細胞と疾患細胞で使い分けられているという考えは、疾患の発症メカニズムにパラダイムシフトを起こす。
マイクロエクソソームは、エクソソームと構成成分を共有するものの構造が異なり、
エクソソームよりも微細で、脂質二重膜を持たない逆ミセル構造をとり、集合してマトリックス様のシートを形成する。さらに、エクソソームは多胞性エンドソーム由来であり、一方、マイクロエクソソームは細胞膜の陥入によって形成される。本研究では、マイクロエクソソームの構成成分、形成過程を解明することで、2つの構造体が存在する生物学的意義を、栄養摂取・代謝サイクルの細胞レベルでの転換から解明する。これまで逆ミセル型の構造体が生体内で発見され、その機能が解明された報告はない。一方、申請者による研究から、多くの器官から逆ミセル型構造体が分泌されることが推測される。2つの構造体(マイクロエクソソームとエクソソーム)が、正常細胞と疾患細胞で使い分けられているという考えは、疾患の発症の前段階にある体質の変化の理解にパラダイムシフトを提示し、生命科学全体に波及効果をもたらす。本年度は、卵形成と色素細胞の形成におけるカルシウム波の生理的な役割を、細胞外微粒子との関連から研究を行った。女性では、出生時に原始卵胞の数が確定する。原始卵胞には、(1)新生児期に成長を開始する第1波と、(2)休眠後に一部ずつ成長する第2波の2種類が存在する。第1波での卵胞活性化のメカニズムは不明である。我々は、このステージに形成期の卵においてカルシウム波が誘導されることを発見した。その鍵因子となるのが、細胞質型クエン酸合成酵素(extra-mitochondrial citrate synthase: eCS)である。また、色素細胞の成熟過程においても、カルシウム波が誘導によってメラノソームが形成されることを発見した。色素細胞におけるカルシウム波の誘導にも、細胞外微粒子を介したeCSの細胞間での輸送が必要であることを明らかにした。
本研究では、成分を共有する2つの細胞外構造体が存在する意義を、卵形成と色素細胞におけるメラノソームの形成に着目して研究を行った。我々の研究から、マイクロエクソソームの形成は、ミトコンドリアにおけるクエン酸回路の活性と相関関係がある。我々が着目するクエン酸合成酵素は、ミトコンドリアにおいて細胞のエネルギー源であるATPを作り出すクエン酸回路の律速酵素である。一般的には、クエン酸産生量の低下により、肥満、糖尿、免疫低下、臓器障害が起こることが知られている。我々は、ミトコンドリア外に存在するクエン酸合成酵素(extra-mitochondrial citrate synthase; eCS)の役割に着目し、遺伝子欠損マウスを作製したところ、毛色が顕著に薄くなることを見出した。eCs-KOマウスは、第2波の卵胞活性化は正常であり、第1波でのみ異常が起こる。このようなモデル系は報告がなく、研究の足掛かりがなかった。そのため、第1波の卵胞活性化についての知見はほとんど存在せず、本研究は極めて独創的である。本研究によって、eCSおよびマイクロエクソソームを介した卵胞活性化シグナルが発見されることが予想される。卵子の早期枯渇を引き起こす原因が解明され、将来的に不妊症の診断や治療に貢献することが本研究の意義である。
本年度は、卵巣、色素細胞における研究を進展させることができた。今後は、ミトコンドリアの活性制御とマイクロエクソソームの形成との観点から、本後も研究を発展させる。さらに、我々が通常摂取する食材の成分として、CD9の発現増進、マイクロエクソソームの分泌促進に効果がある物質を探索することで、正常な生体機能を維持しつつ、疾患の発症(細胞の癌化)を抑制するメカニズムの存在を分子レベルで明らかにしていきたい。すなわち、マイクロエクソソーム形成促進(すなわち、エクソソーム形成抑制)が、分化多能性をもった細胞の特性(細胞機能のデフォルト状態への回帰、オルガネラ・核ネットワークの初期化)を反映している可能性がある。そこで本研究では、マイクロエクソソームの形成メカニズムの解明に取り組むことで、マイクロエクソソームからエクソソームへの形成経路の転換機構の存在と、その経路を逆転させ、細胞機能を回復(老化した細胞から若返った細胞への転換)させる物質の探索をめざす。マイクロエクソソームの形成を促進する食材や栄養素を明らかにできれば、食材のもつ、健康維持への効果が科学的に証明できる。疾患ゲノム解析については国内有数の小児疾患の研究機関としてノウハウが蓄積されており、マウスの表現型から疾患解析につなげることが可能である。機器分析による研究支援活動に加え、研究の方向性に関する打ち合わせを積極的に行う。また、研究方法のプロトコールの共有化、最新情報の共有化により、研究グループ全体の研究レベルの向上をめざす。 -
胚および子宮内膜由来の細胞外分泌顆粒に着目した着床不全の病態解明と新規治療法開発
2021年04月-2025年03月科学研究費助成事業, 浜谷 敏生, 宮戸 健二, 山田 満稔, 基盤研究(B), 未設定
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・ヒト胚盤胞培養後培養液のmiRNAプロファイリング。ヒト子宮内膜組織について抗CD9や抗CD81抗体を用いた免疫電顕の後、ヒト初代培養子宮内膜細胞およびヒト間葉系幹細胞の培養上清(無血清培地)について、超遠心や免疫沈降を用いて細胞外分泌顆粒(EV)を分画毎に分け、プロテオーム、miRNA解析。
・単離したEVを子宮内に投与することで、CD9欠失マウスの子宮性続発性不妊症やβカテニン欠失マウス胚の着床不全をレスキューできるか検討。EVはビーズに結合させ、脂質特異的に結合するPKH67などを用いて可視化させて観察。
・マーモセット個体でも、子宮内腔液、子宮内膜組織などを採取し、雌性生殖器管内のEVと細菌叢を解析。
・計画概要の1. マーモセットの雌性生殖器内の細菌叢とエクソソームの解析
マーモセット子宮内の着床前期胚を膣から上行性に回収する操作の際に得られる子宮内膜組織片をサンプルとしたところ、21検体全てから16S rRNA遺伝子細菌叢の結果が得られた。さらに13検体を加え、現在解析結果について論文作成中である。
・計画概要の4. および5. ヒト胚盤胞培養に使用した後の培養液のEMV解析とART臨床データの解析
顕微授精後に1個の受精卵を30-ul dropに入れ、培養液を交換せず培養して形態良好胚盤胞が得られた場合に、使用済み培養液を回収し、胚それぞれについて凍結保存した(~25 ul)。その後移植され妊娠に至った胚が由来する培養液群(妊娠群)、妊娠に至らなかった胚の由来する培養液(非妊娠群)、胚を入れないコントロール培養液についてmiRNA網羅的解析を行い、各群に特異的なmiRNAを抽出した。さらに、サンプルをプールしないで、それぞれの胚の培養液中の miRNA発現量についてリアルタイムqPCRを用いて解析した。その結果、培養液中の5つのmiRNAの発現量に注目することで、その胚を胚移植した場合に妊娠する可能性を予測できることが明らかとなった (Kamijo S, Hamatani T, et al. Reprod Biol Endocrinol. 2022)。
・計画概要の9. および11. ヒト間葉系幹細胞(hMSC)培養上清がヒト子宮内膜培養細胞に与える影響
脂肪組織由来あるいは月経血由来のhMSCを無血清培地で培養し、上清をヒト子宮内膜上皮細胞あるいはヒト子宮内膜上皮細胞に添加し、増殖速度、スクラッチテスト、上皮間葉転換、脱落膜化能に対する影響を評価した。また、CD9ノックアウトマウスの子宮性続発性不妊症あるいはβカテニンノックアウトマウス胚の着床不全をレスキューできるか検討中であり、これらの結果を2024年度中に論文発表予定である。
再生医療等委員会の承認(多血小板血漿、間葉系幹細胞)、臨床サンプルの収集、エクソソーム保存および解析の方法の検討、さらに、マーモセットの雌性生殖器管内細菌叢の解析法の最適化などに時間を要したため。
・計画概要の1. マーモセットの雌性生殖器内の細菌叢とエクソソームの解析
今後は、マーモセット開腹術時に雌性生殖器腔内へPOM培養液を穿刺注入後に回収した洗浄液の遠心後沈渣を用いて、細菌叢解析を引き続き進める。洗浄液の上清サンプルからは、さらなる遠心分離でエクソソームを抽出し、テトラスパニンの量的質的解析、内容物(microRNA、タンパクなど)の解析などを進める。
また、マーモセットの子宮内膜組織を用いた16S rRNA遺伝子細菌叢解析について結果を纏める。子宮内膜組織片を用いて、上皮細胞からのエクソソーム分泌像を得るために電顕標本作製なども行う予定である。
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・計画概要の9. および11. ヒト間葉系幹細胞(hMSC)培養上清あるいは多血小板血漿がヒト子宮内膜培養細胞あるいは卵巣発育に与える影響
ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞、ヒト月経血由来間葉系幹細胞を無血清培地で培養し、上清をヒト子宮内膜上皮細胞あるいはヒト子宮内膜上皮細胞に添加し、増殖速度、スクラッチテスト、上皮間葉転換、脱落膜化能に対する影響について、種々の間葉系幹細胞、子宮内膜細胞を用いてさらに評価する。また、CD9ノックアウトマウスの続発性(2仔目)不妊症(子宮性不妊症)やβカテニンノックアウトマウス胚の着床不全をレスキューできる可能性とその分子機構についても結果を纏めて、論文発表する。 -
全能性獲得へのロードマップ:幹細胞のミトコンドリア・ゲノム安定性機構の解明
2020年04月-2025年03月文部科学省・日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 山田 満稔, 基盤研究(B), 補助金, 研究代表者
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加齢個体由来の多能性幹細胞は、若齢由来と比較して、増殖能、多分化マーカーやDnmt3aなどのDNAメチル化酵素の発現が低下することが知られる。そこで我々は胚盤胞から胚性幹細胞(ES細胞を)樹立して胚の老化機構を高解像度に捉えるとともに、isogenicな24ヶ月齢までの個体から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を樹立し、初期化機構の違いによる幹細胞への影響を検討する。本研究により得られる知見は、より質の高いiPS細胞の初期化方法の開発と、さらに加齢の機序の深い理解につながる可能性があり、再生医療および生殖医療にとって望ましいものと考える。
加齢による幹細胞機能の低下に関わる分子経路を解明することを目的とし、若齢(6~8週)、中年(6カ月)、高齢(12~14カ月)、超高齢(24ヶ月)およびあらたに30カ月齢のマウスから、皮膚組織由来のiPSC株を樹立した。幹細胞特性の検証のために行った未分化能および多分化能性試験において、すべての多能性幹細胞株は免疫組織染色および定量的リアルタイムPCR(qPCR)法により未分化能性および多分化能性が一様に証明された。
グローバルな遺伝子発現の違いを解析するために行ったRNAシークエンス(RNA-seq)解析の結果、若齢マウス由来ESCと比較して加齢マウス由来のiPSCでは防御やサイトカイン反応に関わる遺伝子の発現量が増加した。p-valueを考慮せず、Fold change>2.0, <-2.0のみで抽出した遺伝子を対象に再度GO term解析を行った結果、減数分裂におけるDNA修復合成、piRNA合成経路、配偶子DNAメチル化などの発現が上昇していた。さらに幹細胞における代謝経路に関わる遺伝子群を対象にpathyway解析を行ったところ、核酸合成経路および脂質代謝に関わる遺伝子群の発現上昇およびエネルギー代謝経路の低下が観察された。
これらを踏まえて、グローバルな代謝状態を解析するためメタボローム解析を行ったところ、これまでのpreliminaryな結果からは、加齢や幹細胞の違いよりも、培養によるbiasが大きいということが問題点として指摘された。今後は培養から回収に至る条件を厳密に定めた上で、あらたに樹立した30カ月齢のiPS細胞を対象に追加解析を行う。
ここまでの研究では、多能性幹細胞における転写と代謝の加齢依存性を明らかにした。今回のデータは、より質の高いiPSCの開発につながる可能性があり、再生医療にとって望ましいものと考える。
30カ月齢の個体から加齢モデルとしての細胞ソースが樹立されたことに加えて、当初予定していたmetabolome解析およびRNA-seq解析からpathway解析を加えることができたため、研究計画はおおむね順調に進展していると考えられた。
RNA-seq解析の結果、発現量の異なる遺伝子群を抽出した。これまでのところ、加齢によるゲノム安定性や代謝に関する明確な違いが捉えられていないものの、代償性に遺伝子群が働いている可能性が考えられる。そこで次年度は、これら遺伝子に対する機能抑制実験としてshRNAを導入し、ゲノム安定性および代謝に関する影響を検討する。さらにここで有意な変化が観察された場合には、成育医療センターより供与されたヒトiPS細胞株を用いて同様の解析を行い、加齢によるiPS細胞への影響と救済方法を模索する。 -
ヒト初期胚発生型リプログラミングによるがん化しない安定したiPS細胞の樹立
2017年04月-2020年03月文部科学省・日本学術振興会, 科学研究費助成事業, 山田 満稔, 若手研究(A), 補助金, 研究代表者
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受精卵から樹立される胚性幹細胞(ES細胞)と、体細胞から樹立されるiPS細胞は、いずれも未分化能および多分化能を有し、細胞治療や疾患モデルへの臨床応用が期待されている。しかしながら受精卵および幹細胞に多くみられる染色体異常や、加齢成人から樹立したiPS細胞におけるゲノム不安定性は、安全な生殖補助医療と再生医療の実現化にとって障壁となっている。本研究では受精卵からES細胞を樹立する過程で発現する遺伝子Zscan5bを同定し、Zscan5bが染色体構造を安定させるとともに、体細胞分裂期のDNA損傷修復を介して、いまだ分からないことの多いES細胞におけるゲノム安定性に寄与することを明らかにした。
本研究は、「受精後の初期に生じる遺伝子の機能を喪失させることで体細胞とESCsのゲノム安定性が損なわれ、ランダムに染色体異常が起こりえる」というあらたな概念を提示した。マウスモデルとヒトにおける遺伝子発現の時期は異なるため、本研究成果がそのままヒトに当てはまるかは今後さらなる検証が必要である。しかしながら今回の成果は、健全な受精卵の発育や幹細胞の樹立を通して、より安全な生殖補助医療および再生医療の実現に大きく寄与することが期待される。 -
生殖とエクソソーム:卵成熟、受精、胚発生、着床におけるクロストーク機構の解明
2016年04月-2020年03月科学研究費助成事業, 浜谷 敏生, 宮戸 健二, 阿久津 英憲, 山田 満稔, 基盤研究(B), 未設定
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マウス子宮内膜上皮細胞(EEC)では、CD9が発情期と発情間期は基底膜側に局在し、着床期では子宮内腔側に局在し胚の着床部位に一致した。CD9欠損マウスのECCでは発情期に微絨毛が短小化し、ミトコンドリア数は有意に減少した。ECCにおけるCD9の再配置と細胞外分泌がECC膜構造に影響し、内膜の着床能を制御すると考えられた。
ヒト胚盤胞培養後培養液中のエクソソームに含まれるmiRNAについて患者同意のもと解析した。胚から分泌される8つのmiRNAを見出し、ロジスティック回帰モデル(5-fold Cross Validationで平均 Accuracy0.82)により胚の妊娠率予測が可能であった。
生殖医療における細胞外分泌顆粒(EMV)に関する報告は、我々の論文も含め未だ数報しかない。テトラスパニンCD9はEMVの表面に存在しEMVマーカーとなるため、本研究ではCD9に注目して子宮内膜上皮細胞からのEMV分泌機構を研究する一方、EMVを介して胚から分泌されるmiRNAにも網羅的検討を加えた。EMVの観点から内膜側と胚側の両側の着床因子を検討し、着床の分子機構におけるEMVの寄与が示唆された。これらの結果は、反復着床不全を克服するための胚の質的評価(移植胚の選択)法やEMV(e.g. 自己多血小板血漿)の子宮内投与による着床促進療法などへの臨床応用に繋がることが期待される。 -
ヒト生命萌芽の分子機構の解明~生殖補助医療の向上及び安全性を目指して~
2009年04月-2012年03月若手研究(B), 山田満稔, 補助金, 研究代表者